14 September

爽やかな9月。秋冬野菜は虫対策をしながら育てましょう

9月に入り、すっかり秋めいてきましたね。
日が昇る時間はいつの間にか遅くなり、そして日が暮れる時間は気づけばとても早くなりました。最高気温も最低気温も少しずつ低くなってきて、日中過ごしやすい日が増えました。あの暑かった夏が遠い昔のようです。
「実りの秋」という言葉があまりにも有名なので、意外に思われるかもしれませんが、9月という季節は、野菜づくりの視点で言うと、実は「端境期(はざかいき)」に当たります。気温が徐々に下がってくるのを受けて、夏野菜の実がつくスピードが緩やかになる一方、秋冬野菜は、種播きや植え付けの時期に当たるので、収穫できる野菜の種類が少なくなるのです。
しかし、気候としては、野菜が成長しやすい状態になります。
近頃の盛夏は、温度計が40℃前後を指す日もしばしばあり、その上、雨が何日も降らない干ばつが続き、野菜にとって、天候をそのまま受け入れ「自然」の状態で生きるのにはむしろ過酷な時期となっています。
一方、9月になると、30℃を超える日は減り、雨が降る日も増えます。適度な気温で水もたっぷりある環境は、野菜にとっても過ごしやすいので、こうした時期に種を播き、苗を植え付ければ、野菜はすくすくと育ちます。農業実践教室でも9月いっぱいまでは、秋冬野菜の苗の植え付けや種まきで大忙しです。
秋冬野菜は、同じ野菜でも種を播く時期や苗を植える時期によって、味が違ってきます。そうした違いを楽しめるのも家庭菜園の醍醐味の一つですので、ぜひ、時期による野菜の味の変化を身近に楽しんでみてください。

秋のレタス

秋のレタス

9月にすくすく育つ葉物野菜

9月にすくすく育つ葉物野菜

さつまいも掘り

さつまいも掘り

~9月は種まきに最適の時期です~

野菜の種には、「発芽適温」といって、発芽しやすい温度帯があります。野菜によって発芽に最適な温度帯は異なるのですが、秋や冬に収穫する野菜は、20~25℃前後であることが多いです。

発芽したホウレンソウ

発芽したホウレンソウ

ホウレンソウの種まき

ホウレンソウの種まき

小松菜や水菜、ルッコラ、チンゲンサイ等いわゆる葉物野菜は、盛夏に種を播いても暑すぎて発芽できませんし、発芽してもうまく育たないのですが、9月に入って気温が下がり始めたら、種を播いても大丈夫です。9月は、残暑を感じる暑い日もありますが、朝から涼しい日や翌日に静かな雨が降る日を狙って種を播くと、種播き後2~3日で発芽します。
ホウレンソウや春菊は、発芽適温が小松菜等より低く、少し肌寒く感じるくらいの日に種まきをすると発芽しやすいです。

間引きを待つ白菜

間引きを待つ白菜

秋冬に育てることが多い白菜は、苗を買って植えつけるイメージがあるかもしれませんが、白菜は、苗を植えるより地面に直接種を播いて育てる(直播と言います)方が、育て方としては遙かに良いです。苗にして畑に植えると、移植時にどうしても根を傷つけてしまいます。白菜は、根が非常にデリケートな野菜なので、根に移植のストレスを与えない直播が一番良いのです。
白菜の発芽適温は、18~22℃ですが、朝晩が涼しければ数日で発芽し、大きく育てるのはさほど難しくありません。ただ、直播の場合、畑で生育する時間が長い分、虫食い等の被害に遭うリスクが高まります。ですから、種は1つの植穴に5粒くらい播き、本葉が数枚出始めたら間引くと良いでしょう。
種を播く時期も重要です。白菜は、適度に温度がある期間に葉の数を増やして結球します。あまりにも種まき時期が遅くなってしまうと、葉の枚数を確保できず、結球しません。ですから、白菜は、9月末までには種まきを終えましょう。

発芽したばかりの芽はコオロギ達が大好き

発芽したばかりの芽はコオロギ達が大好き

防虫ネットで野菜を守る

防虫ネットで野菜を守る

また、種を直接畑に播く場合、コオロギやバッタが、発芽直後の柔らかい新芽を狙って食べに来ます。さらに、白菜や小松菜等いわゆる「アブラナ科」というくくりで分けられる野菜は、9月・10月はモンシロチョウや蛾の幼虫による虫食い被害に遭いやすいです。ですから、この時期に無農薬でこれら野菜を綺麗に育てたい場合は、「防虫ネット」で覆うことをお勧めします。ネットが虫の飛来を防ぎ、虫食い被害を大幅に抑えます。

なお、ネット類等被覆資材を使う時には、それを支える枠をきちんと挿し、裾の処理もまたきちんとすると、見た目がスッキリとして良いだけでなく、虫の防御率も高まります。
野菜づくりは「見た目良ければ全て良し」と言われていて、一つ一つの作業の完成度が高いほど、結果も良くなります。作業は、慌てず丁寧に進めましょう。

~9月は秋ナスを楽しみましょう~

蒸しナス

蒸しナス

「秋ナスは嫁に食わすな」という言い伝えが古くからあります。
この言い伝えには、いくつか解釈があるようですが、「秋ナスのような美味しいナスは、憎らしい嫁に食わせるのは勿体ない」という解釈と、それとはおおよそ反対の「秋ナスは体を冷やすから、大事な嫁に食わせるな」といった解釈が有名です。
ナスは、7月頃から収穫を楽しめる夏野菜で、ナスの旬というと夏を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、実は秋もまた旬です。
初夏のナスは、柔らかくてみずみずしさが際立って美味しいのですが、昼夜の温度差が大きくなる夏の終わり頃から、ナスは実が締まって美味しさが凝縮してきます。これが秋ナスです。秋ナスは、皮がパンと張って実はズッシリと詰まり、味は甘味が増して、9月こそナスの旬と思える美味しさです。
そんな秋ナスを使った料理は、ズッシリと実が詰まっている状態を活かして、厚めにカットして、蒸したり軽く煮込んで味付けするレシピが馴染みます。中でも、ナスの食感や味が前面に出る「蒸しナス」が、この時期、断然お勧めです。
蒸しナスは、電子レンジで簡単に作ることが出来ます。
秋ナスの皮は、少し固めであることが多いので、皮はピーラーで剥きます。1本を半分に切って少し水にさらしたら、ラップに巻いてレンジで加熱します。500wで4分くらいが目安です。
加熱後、食べやすい大きさにカットします。手で直接触ると熱いので、包丁や箸を使いましょう。
冷める前に調味液に浸します。調味液はお好みによって、ポン酢でも良いですし、醤油で味を調えた出汁もまた美味しいです。出汁であれば、生姜を入れるとさらに風味が増します。5分程度浸けて味を滲み込ませてからいただきましょう。