13 March

冬野菜に別れを告げて、春夏野菜の種を播く3月

~冬野菜に別れを告げて、春夏野菜の種を播く3月~

3月に入って、だいぶ日差しが強くなり、日照時間も長くなって、春が来たことを肌身で感じるようになりました。スギ花粉も飛び始めているので、花粉症の方は大変かもしれませんね。
春の到来にウキウキとする方が多いかもしれませんが、農業実践教室の3月は、とても緊張する季節です。というのも、3月は一年の中で温度の上昇と下降が最も急な時期だからです。
たとえば、3月は温度管理をしながらビニールハウスの中で苗を育てる時期なのですが、気温の急上昇と急下降にうまく対応できないと、苗を一瞬でダメにしてしまいます。
ビニールハウス内の温度は、外気温の上下に大きく左右されます。ハウス内温度の急上昇は、雲間から太陽が急に顔を出すだけで起こりますし、温度の急下降は天気予報に反して起きることもあります。ビニールハウスの近くにいる時は良いのですが、常時張り付いているわけにはいかないので、離れる時には心配でたまりません。毎日、今日も無事かどうか、ドキドキしながら管理します。

根がしっかり張っている雑草

根がしっかり張っている雑草

一方、3月の畑は、まるで眠りから覚めたかのように色々なものが次々に活性化してきます。雑草は伸び始め、成長が止まっていた野菜たちも静かに大きくなり始めます。
収穫しきれずに畑に残っていた冬野菜たちは、種をつけるために一斉に「とうだち」を始めます。「とうだち」というのは、野菜の中央付近から「花芽(花になる芽)」がニョキニョキと生えてくることを言います。「とうだち」すると、野菜として本来食べる「葉」は筋張って硬くなり、食味も落ちます。
とうだちで出てきた花芽は、食べられる場合が多いです。春野菜の一つである「菜の花」も、実は「花芽」です。一般的に販売されている菜の花は、花芽が美味しい専用の品種であることが多いのですが、皆さんが育てる小松菜やちんげん菜、白菜等も収穫せず畑に置いておくと、そのうちに花芽が出てきて、美味しく食べることができます。
さらに、花芽をそのままにしておくと、つぼみが開いて黄色い可愛らしい花が咲きます。そして、さらにそのまま放っておくと、今度は種になります。誰が教えたわけでもないのに、冬野菜たちは、毎年この時期になると環境の変化に規則正しく呼応して、種を残す方向に動いていきます。そんな自然の営みを身近に感じられることも、菜園のある生活での楽しみの一つです。

小松菜の芽

小松菜の芽

小松菜の花芽

小松菜の花芽

小松菜の花

小松菜の花

 

~3月は芽吹きの季節!種を播きましょう~

暖かくなってきた3月は、種を播くのに良いシーズンです。この時期にはぜひ、野菜の種を播きましょう。
小松菜や水菜、春菊などの身近な葉物野菜は、3月に種を播き始めると育てやすいです。ただ、3月はまだ気温が低いので、種を播いた後は、何らかの保温をしながら育てましょう。
キャベツやレタスは、畑に直接種を播くよりも、「苗」を作り、苗を植えた方がうまくいきます。3月はまだ温度が低いので、苗づくりをする場合は、保温・加温をしましょう。春のキャベツの栽培は、夏秋での栽培と比べると害虫が少なくて育てやすいです。

キャベツの発芽

キャベツの発芽

カモミールの芽

カモミールの芽

少し広めのスペースがある人は、ジャガイモの植え付けやトウモロコシの種播きを始めると良いでしょう。農業実践教室では、3月にジャガイモの植え付け、トウモロコシの種播きを行います。ともに収穫は6月です。

ジャガイモの芽

ジャガイモの芽

ジャガイモは、毎年5~6品種を植えつけています。ジャガイモは、品種によって食感や色、味に違いがあり、品種ごとに美味しい食べ方も異なります。家庭菜園であれば、少しずつ色々な品種のイモを育てると楽しいと思います。種用に買ったジャガイモが余ったら、もちろん、食べることができます。
ジャガイモは、肥料や培養土(植物が育つのに必要な肥料成分がバランス良く入った土)が入っている袋に土を入れ、水が抜けるよう小さな穴をたくさんあけておいたところに植え付けても育ちます。大きめの麻袋等に植えつけてもオシャレですよね。

トウモロコシの保温栽培

トウモロコシの保温栽培

トウモロコシは、3月に種を播き、保温をしながら育てます。保温しながら育てるのは、早く成長させて、実を食う害虫が大発生する時期よりも前に収穫をするためです。保温の手間が少しかかりますが、そうすることで無農薬でも美味しいトウモロコシを収穫できます。「本当に採れたて」のトウモロコシの美味しさは、想像をはるかに超えるものです。ぜひ、一度味わっていただきたいものです。

~さらば冬野菜!最後の冬野菜は鍋を堪能しましょう~

3月という季節は、実は野菜の端境期(はざかいき)です。ビニールハウス等生育環境を人工的に整えた場所で栽培しない限り、この時期に収穫適期を迎える野菜というのは殆どありません。
自家菜園でこの時期に食べられる野菜は、冬野菜の残りがチラホラという人が多いと思います。そして、それらは寒さや冬の乾燥で傷んでいる場合が往々にしてあります。しかし、捨てるには忍びない・・・・。そんな時には、鍋にしてしまいましょう。
たとえば大根。大根は、収穫適期に収穫せずに畑に置いておくと霜や風雨で傷みます。ですから、自分で栽培したダイコンを長期間楽しみたい場合は、収穫したものを一度地中に埋めて保存します。霜が降りる前に収穫して地中に埋めて、3月上旬頃まで保存できます。地中に保存した大根は、上手に保存できていれば、生で食べてもみずみずしくて甘くて美味しいです。しかし、保存が上手に出来ていないと、たとえば、凍ってしまうことがあります。凍ってしまうと、生で食べた場合に凍った部分の食味が落ちるのですが、その一方で、繊維質が壊れて出汁等の味が滲み込みやすくなります。鍋や煮物にすると出汁がよく滲みて、かえって美味しく出来上がるのです。

我が家では、たくさんの大根を消費するため、この時期には大根のスライス鍋をよくやります。作り方は、とても簡単です。カツオと昆布でとった出汁に醤油、塩、料理酒を入れて味を調えます。隠し味にニンニクを2~3片加えても美味しいです。この出汁にスライサーで薄くスライスした大量の大根を入れます。スライサーを使うことがポイントで、こうすると包丁で切るよりもずっと薄く(1mm未満)ダイコンをスライスできます。大量の大根を入れた鍋をしばらく火にかけます。大根に出汁が滲みてきたら、食べやすい大きさに切った豚のバラ肉、きのこ、お好みで油揚げ、豆腐等の具を入れます。取り皿に出汁ごと取り分けて、お好みで七味唐辛子をかけていただきます。

スライサーでスライスした大根

スライサーでスライスした大根

スライス大根の鍋

スライス大根の鍋

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加