14 February

極上の冬野菜を楽しみ、美味しい春夏野菜の基盤を作る2月

ホウレンソウ

~2月の寒さの洗礼を受けて元気に生き残った野菜たちは、極上の味~

寒い日が続きますね。
農業実践教室のある千葉市若葉区は、千葉市の中でも冬が厳しい地区です。2月にもなれば最低気温はマイナス10℃、日中は強い空っ風が吹く日も多く、自然の厳しさを感じる月です。

この時期に自然の厳しさを感じているのは人間だけではありません。
野菜にとって、2月という季節は生死を分ける厳しい季節でもあります。
多くの野菜は、厳しい寒さや霜に当たると茎や葉の水分が凍り、それが融ける際に細胞の組織も壊れ、そのまま細胞も死んでしまいます。細胞が死ぬので、そのまま野菜もダメになっていきます。その代表例がレタスや春菊です。
一方、人参やホウレンソウ等限られたいくつかの野菜は、寒さに当たっても体が凍りつかないように体内の糖分濃度を高くします。そのため、むしろ寒いほどに糖分が高まり、野菜としては美味しくなっていきます。

ニンジン

ニンジン

ホウレンソウ

ホウレンソウ

白菜やルッコラ、小松菜等も2月に収穫したものはとても美味しいです。特に、適度な大きさで2月に収穫時期を迎えたルッコラは、味も香りも濃いうえ、この時期には葉に厚みが増しているため、ドレッシングをかけてもベチャっとしにくく、使いやすいです。

白菜(外葉ボロボロの図)

白菜(外葉ボロボロの図)

ボロボロ外葉でも中身はキレイな白菜

ボロボロ外葉でも中身はキレイな白菜

ルッコラ

ルッコラ

 

ただし、人参やホウレンソウと違って、これら野菜を2月に美味しい状態で収穫するためには、この時期に「ほど良く若い状態」であることが必要です。収穫するのに一番良い時期を過ぎても収穫せずに長いこと放置し続けたものは、寒さと連日の霜で部分的に壊死したり、固く筋張ってきたりします。
逆に、若すぎる場合、ある程度保温の環境を整えてあげないと、全く大きくならないですし(白菜は結球しません)、寒さや乾燥等で傷むことがあります。

ですから、2月にこれらの野菜を美味しい状態で収穫できるようにするためには、2月の収穫を狙って、遅めの種まきや苗の植え付けをしていきます。どこまで遅らせたら良いのか、ということは、地域の気候特性等もあるため、自分でやってみないと分からないところがありますが、季節特有の本当に甘くて味の濃い美味しい野菜を味わえますので、ぜひ、挑戦していただきたいところです。

~春の豊作目指し、コツコツと地道な作業をする2月~

2月は、春野菜・夏野菜(春夏野菜)の準備期間でもあります。
野菜作りに必要な堆肥と肥料は、種まきや苗の植え付けの1カ月以上前に畑に入れておくことが望ましいです。3月から少しずつ野菜の種まきや植え付けを始める方が多いと思いますので、逆算して2月から作業を開始しましょう。

なお、春夏野菜は、畑での野菜に対する環境の整え方次第で、種を播く時期、苗を植える時期が変わってきます。春先の低温時期に保温等をできる方は、温度対策をしない場合に比べて種まき・植え付けを早くできます。もちろん、その分収穫時期も早いです。

堆肥・肥料入れ

堆肥・肥料入れ

たとえば、農業実践教室では、3月にジャガイモの植え付け、スィートコーンの種まきを行い、初期は保温をしながら育てます(ジャガイモとスィートコーンでは保温方法が異なります)。収穫時期は、ともに6月です。無農薬で栽培するため、病害虫が増える時期よりも早い時期の収穫を目指して、早めに種まき・植え付けを行っているのです。

堆肥・肥料入れ

堆肥・肥料入れ

2月は、こうした春夏作の準備期間であると同時に、前年から植えつけておいた玉ねぎやにんにくに追加で肥料を入れる時期でもあります。この「追加で肥料をやること」を「追肥」と言います。2月から追肥をしておくと、暖かくなってすぐに勢い良く地上部が育ちます。しかし、2月中は、追肥してもすぐに肥料の効果を感じられません。

ちなみに、私はこの時期に追肥をするたびに「何も咲かない寒い日は、下へ下へと根を伸ばせ やがて大きな花が咲く」という言葉を思い出します。「人生には、何をやってもうまく行かない厳しい時期があるもの。そんな時には、今は花が咲く時期ではないのだと気持ちを切り替え、基礎体力・基礎能力をつけることに専念しましょう。地道に努力を続けていけば、やがて見事に地上に大きな花を咲かすことができますよ」という意味の言葉です。ニンニクや玉ねぎの手入れは、この言葉とピッタリと重なるように、追肥の時の状況とその後の結果が繋がります。

ニンニク

ニンニク

玉ねぎ畑

玉ねぎ畑

玉ねぎ

玉ねぎ

 

ところで、冬の寒い時期に気づかぬ間にゆっくりじっくりと増えていくのが冬の雑草です。冬の雑草は、背丈は大きくないのですが、根がとても張っているので、大きくしてしまうと非常に厄介です。まだ小さいと思って放置しておくと、地上部からは想像がつかないほど根を張り巡らせた雑草になっているので、除草が大変になります。雑草は、野菜にとって必要な養分を吸ってしまうので、小さなうちに除草しましょう。

このように、寒い冬は農閑期に思えるかもしれませんが、案外やっておいた方が良いことがたくさんあります。寒さに負けず、外に出て管理作業をしましょう!

~2月のホウレンソウは甘味を堪能して~

ホウレンソウの根っこ

ホウレンソウの根っこ

先にお話ししたように、2月に収穫できる美味しい野菜の一つがホウレンソウです。
寒さを乗り越えるために糖度を増したホウレンソウは、まるで砂糖を入れているかのごとく甘いです。特に、茎の赤い部分は甘味が強いので、ぜひ切り落とさないで活用しましょう。この甘い赤い部分は、今のように甘いお菓子がなかった昔は、子供のおやつとして食べられていたそうです。

ホウレンソウのおひたし

ホウレンソウのおひたし

甘いホウレンソウは、どのように食べても美味しいのですが、やはり甘さを堪能するのであれば、シンプルなおひたしがお薦めです。さっと茹でてしっかりと水気を絞ったら、カツオ出汁で割った淡口醤油を最小限の量だけかけると、淡口醤油の爽やかな塩辛さとホウレンソウの甘さがよくマッチします。淡口醤油も色々あるので、可能であれば、糖類を加えていない淡口醤油を選びましょう。醤油の量を極限まで減らして、ちりめんじゃこと和えても美味しいです。

ポパイ鍋

ポパイ鍋

また、我が家でよくやる冬の定番料理が通称「ポパイ鍋」です。ポパイ鍋は、ホウレンソウが主役の鍋で、ニンニクとショウガだけで出汁をとったスープにたっぷりのホウレンソウとシャブシャブ用の豚肉を入れ、シャブシャブとしていただくものです。つけだれにはゆずポンが合います。
とてもシンプルな味付けなので、ホウレンソウの甘味をしっかりと堪能でき、またとてもたくさんのホウレンソウを一度に食べられるので、家庭菜園でホウレンソウをたくさん作っている方にピッタリのお料理です。ニンニクとショウガもたっぷりなので、食べると体が温まり、元気が出ますよ。